2019-03-09
アストンマーティン・プロジェクト003:
ミッドエンジン・ファミリーの3番目のモデルを発表
l プロジェクト003は、ValkyrieとValkyrie AMR Proに続く、第3のミッドエンジン・モデル
l アストンマーティンが新開発したV6エンジンを搭載
l シャシーには、アクティブ・サスペンション、アクティブ・エアロダイナミクスに加え、モーフィング・エアロサーフェイスを採用
l アストンマーティンのマット・ベッカーとクリス・グッドウィンがプロジェクト003のダイナミック・セットアップを監修
l ミルトンケインズに開設された新しいアストンマーティン・アドバンスド・パフォーマンス・センターでプログラムを進行
l 全体的な開発作業はアドバンスド・オペレーションズ部門のチーフエンジニア、フレーザー・ダンが主導
l 2021年後半に最初のクルマを納車予定
2019年3月5日、ジュネーブ(スイス):
ミッドエンジン・ハイパーカーの開発を続けるアストンマーティンは、ジュネーブモーターショーにおいて、プロジェクト003と呼ばれる第3のモデルを発表します。
斬新かつ革新的なプロジェクト003には、F1マシンや、画期的なValkyrie(ヴァルキリー)に採用されているコンセプトとテクノロジーが直接フィードバックされています。プロジェクト003は、公道走行のための実用性を確保するために一定の譲歩は強いられているものの、エンジニアリング・コンセプトに関しては一切の妥協を排して開発されています。最先端のF1テクノロジーを惜しみなく投入したこのモデルは、数量限定で生産され、他のハイパーカーとは一線を画すデザインを採用しています。
アストンマーティン・デザイン・ディレクターのマイルス・ナーンバーガーは、「プロジェクト003は、アストンマーティンValkyrieの影響を強く受けていますが、まったく独自のクルマです。私たちは、プロジェクト003で、アストンマーティンの血統を正統に受け継ぐために熟考を重ね、同時にValkyrieのエッセンスをさらに色濃く抽出することに力を注ぎました。デザインは、一部のエリアではそれほど過激なものではありませんが、基本的には革新的なデザインを追求して、いくつかのアイデアやコンセプトをさらに進化させています。私たちは、アストンマーティンValkyrieの開発でエイドリアン・ニューウェイと一緒に作業を行ったことで大きな影響を受けました。このクルマには、すべてのアプローチにその姿勢が反映されています。」とコメントしています。
基本的なスタイリングとエアロダイナミクスをアストンマーティンValkyrieと共有したプロジェクト003は、特徴的なフロントエプロンと大型のリア・ディフューザーを備え、フロア下を流れるエアから強力なダウンフォースを生み出します。さらに、プロジェクト003は、次世代航空機のモーフィング・テクノロジー(翼全体を滑らかに変形させながら飛行する技術)を応用しています。
FlexFoil™と呼ばれるこの技術は、広範囲に及ぶ性能および音響飛行試験を通じてNASAによって検証されており、アストンマーティンは、この最先端の航空宇宙技術を自動車業界で初めて採用するメーカーとなります。
このシステムは、エレメント全体の物理的な角度を変えずにクルマのダウンフォースを変化させることを可能にし、ハイパフォーマンス、効率の向上、そして風切り音の少ないシームレスなデザインを実現しています。現代における“最先端”のアクティブ・ウイング・デザインに見られる乱流や、それに伴う空気抵抗の増加も事実上排除されています。
生産デザインでは、従来のリアウイングよりもさらに大きな前端および後端の“たわみ”が可能になり、車両の走行条件の変化に対してリアルタイムで反応するために、作動レートも大幅に引き上げられています。
車両上部の全体的な形状は、空力的な観点からアストンマーティンValkyrieと良く似ていますが、新しいフロントおよびリア・ランプの形状によって、独自のスタイルを生み出しています。ランプのグラフィックは独自のデザインを採用していますが、その内部は、非常に軽量なアストンマーティンValkyrieの構造を流用しています。そのため、4つのランプを合計した重量は、DB11のヘッドランプ1つ分よりも軽量です。
アストンマーティンValkyrieとプロジェクト003の最大の違いの1つは、コックピットの大きさです。その理由は、利便性と快適性を向上させるというデザイン・コンセプトが採用されたことによります。そのため、プロジェクト003は前方へ開くLMP1スタイルのドアを備えています。ルーフ・セクションもドアと一緒に移動するため、乗り降りが容易になっています。運転席と助手席の間隔を広げるために、センターコンソールの幅が拡げられ、ラゲッジスペースはシート後方のフロアからアクセスすることができます。財布や携帯電話といった小物を収納するためのスペースも設けられています。
コックピット自体は、視覚的な複雑さを排除して、運転に集中できるユニークかつ刺激的でダイナミックな環境を創出する、大胆で新しいデザインと素材を採用しています。“アペックス・エルゴノミクス”と呼ばれるこのコックピットは、ドライバーの背中、ステアリングホイールとペダル類の中心が、完全に整列しています。
ステアリングコラムに取り付けられたディスプレイは、ステアリングホイールのリムによって遮られることのない非常に優れた視認性を提供します。インフォテインメントシステムは、最高の効率、機能性、シンプルさと柔軟性を実現するために、手持ちのスマートフォンを利用する“Bring-Your-Own Technology(BYOT)”が採用されています。
“アペックス・エルゴノミクス”の視覚的な特徴は、コックピットの下部セクションと、大きな曲面を描くフロントウィンドウを擁する上部セクションを明確かつ機能的に分離する、ラップアラウンド・バンド(水平方向に設置された帯状のセクション)です。ギルと呼ばれる縦方向の窪みを備えたこのバンドには、従来の独立したタイプのエアベントやスピーカーを設置する代わりに、オーディオ、ベンチレーション、アンビエントライトといった機能が目立たたないように一体化され、このコックピットの大きな技術的特徴となっています。
この水平方向の幅広いセクションに、主要なスイッチ類、ディスプレイなどを集約することにより、走行中のドライバーの操作性が向上しています。インテリアの素材は、伝統的にウッド、レザー、ガラスなどが使われていますが、プロジェクト003では、アストンマーティンが“スペースクラフト”(宇宙時代のテクノロジーと伝統工芸の融合)と呼んでいる先進的なデザインや製造技術を反映したものとなっています。
これによって、ウッドやレザーなどを使用しなくても、軽量な構造、先進的なデザインと製造技術(最先端の3Dプリントを含む)を適用することで、高い価値を備えたインテリアが実現しています。車両のあらゆる領域で軽量化を達成するために、価値観の転換が必要になったともいえるでしょう。たとえば、3Dプリンターによって製造されたセンターコンソールは、機能スイッチを内蔵しながらも、重量を50%も削減することに成功しています。さらに、CADモデリングのおかげで、通常は作成が“不可能な”場所に、非常に精細かつ複雑な造形を配置することが可能になっています。これは、軽量化、卓越した視覚的および触覚的品質に対する、飽くなきこだわりを追及することによって生み出されたものです。
プロジェクト003の技術的な詳細は、開発プログラムが進むにつれて明らかになる予定です。しかし、既に判明していることは、このクルマには、完全に新開発されたアストンマーティン製ターボチャージャーV6ハイブリッド・エンジンが搭載されるということです。これによってアストンマーティンは、エンジンを自社製造するメーカーへと復活を遂げます。
このエキサイティングな新しいパワーユニットには、画期的なNexcel(ネクセル)シーリング・オイル・システムが装着されています。このオイルカートリッジは、わずか90秒以内に交換することが可能で、交換されたオイルはその後精製されて再利用されます。
このシステムは、サーキット専用モデルのアストンマーティンVulcan(バルカン)に初めて搭載され、その性能と耐久性を証明するため、数多くのニュルブルクリンク24時間キャンペーンが実施されました。アストンマーティンAM-RB 003は、Nexcelシステムを搭載した、公道走行可能な世界初のクルマとなります。
プロジェクト003は、Valkyrie直系のモデルとして、軽量なカーボンファイバー構造を基盤に製作され、最高のエアロダイナミクス効果を実現するために、カーボンファイバー製のボディを纏っています。アクティブ・エアロダイナミクスとモーフィング・エアロサーフェイスを特徴とするプロジェクト003は、公道走行可能な車両パッケージとしては、驚異的なレベルのダウンフォースを発生します。プロジェクト003には、Valkyrieと共通のコンセプトを備えたアクティブ・サスペンションと電子制御システムも移植されました。これによって、これまでよりも一段高いレベルの精密なシャシー、公道およびサーキットにおいてクラス最高のダイナミクスを実現するドライバー・コントロールが実現しています。
AM-RB 003のダイナミック・パフォーマンスを最適化する作業は、アストンマーティン・チーフエンジニアのマット・ベッカーと、アストンマーティン・エキスパート・ハイパフォーマンス・テスト・ドライバーのクリス・グッドウィンが担当しました。現在、ベッカーとグッドウィンは、その比類なきドライブ・センスと豊富な専門知識を活用して、アストンマーティンValkyrieの集中的な開発作業を実施しています(走行可能な試作車が完成する前の段階では、RBATと呼ばれる世界有数のシミュレーターを使用していました)。ここで得られたノウハウは、AM-RB 003プロジェクトにも適用されることになります。その一方で、アドバンスド・オペレーションズ部門のチーフエンジニアであるフレーザー・ダンは、プロジェクト003独自のキャラクターとダイナミックなスタイルを実現するための貴重な情報を提供しています。
アストンマーティン・ラゴンダ社長兼グループCEOのアンディ・パーマーは、次のように述べています。「アストンマーティンが、エイドリアン・ニューウェイとパートナーを組んでアストンマーティンValkyrieおよびアストンマーティンValkyrie AMR Proを製作するための素晴らしい旅に乗り出したとき、私は、それが長期的なコラボレーションに発展することを望んでいました。これらのプロジェクトは現在、最初の走行可能なプロトタイプのテスト走行が開始され、信じられない程エキサイティングな段階へと突入しています。この特別なパートナーシップが、プロジェクト003でも継続されることになり、大変嬉しく思っています。このハイパーカーは、アストンマーティンValkyrieのDNAを受け継いでいるだけでなく、アストンマーティン初の量産ミッドエンジン・スーパーカーにも影響を与えることになるでしょう。」