今回の試乗車はマセラティ3200GT。なんと珍しい6速マニュアルミッションです。
マセラティ量産車の分類は大きく分けると2ドアと4ドアがあり、このモデルは先代の2ドアモデルです。この時代はマセラティ社にとって大きな改革時でフェラーリ傘下に入って最初の車となります。
3200GTは2001年まで生産されていますからこの車両は最後の年の車です。
きっと信頼性は高いと思われます。内装・外装共にブルーで統一されていて年式のわりにきれいです。私個人的に言うと3200GTはブーメランと言われるテールランプが結構好きで憧れの車の1台でした。
わくわくするようなターボ車は少ないんですよね。
ちなみに3200GTと後に発売されるクーペは外見上殆ど同じで、外見上の違いはテールライトとボンネット上のエアスクープぐらいだと思います。
しかし、中身は大きく違います。まずエンジン、最後の自社製エンジンとなるV8ツインターボです!味付けが楽しい!トルクが1500RPMぐらいから盛り上がってくるので常時どこの回転からアクセルを踏んでも加速してくれますし、加給圧が上がってくる時の危険な程の加速感は自然吸気のエンジンでは絶対味わえない楽しさがあります。
マニュアルミッションも秀逸でストロークが少ない上にギヤが入る感触はカチッカチッとしっかりしたものでレーシングカーの様でした。ギヤチェンジするだけで楽しい。
ここら辺はフェラーリより古くからレーシングカーを造っていた会社らしい所です。
ワインディングを走らせた時に身のこなしが軽い!と思ったら現行のクーペ(カンビオコルサ)より100キロも車重が軽いんですね。
その車重とエンジン特性が相まってスポーツ走行性はかなりレベル高い車でした。にも関わらずインテリアや走りにラグジュアリー性もしっかりあってしかも大人がゆったり乗れる4人乗り。いろいろな用途に使える素晴しく味のある車だとびっくりさせられた試乗でした。
マセラティのフラッグシップであり、イタリアンフラッグシップでもある。フェラーリのエンジンを搭載した4ドアラグジュアリースポーツセダンでデザインもフェラーリと同じピニンファリーナとなった。
クアトロポルテとはイタリア語で4枚ドアを意味します。マセラティクアトロポルテとしては1963年に初代が発売されて以来、現行で5代目になります。歴代クアトロポルテはマセラティ社のさまざまな事情からデザイナーが全て違います。
現行の5代目はマセラティがフェラーリ傘下の会社であった為にデザイナーはピニンファリーナとなっています。デザインだけでなく技術的にもフェラーリとの協力という特別な環境で出来上がった車です。
独特な存在感のあるエクステリアのイメージは粋、まさしくイタリアン。
同じクラスの車と言うとメルセデスのSクラス、BMWの7シリーズ、アウディの8シリーズ等になります。プレステージ・サルーンクラスにイタリア車としては唯一の存在となります。
その中でクアトロポルテはどんなキャラクターか?エクステリアのデザインもイタリアらしい個性があります。インテリアもウッドと皮を品良くデザインに取り入れた粋な車です。しかし何よりも、ドライブするとこの車の個性がはっきりわかります。
このクラスの車は如何に静かに如何に車に乗っている事を気づかない様にするか?と言うコンセプトです。そう言ったクラスの中にあってクアトロポルテは異色です。のんびりドライブするとわずかにですが美しい音色のエキゾーストノートが聞こえる普通の高級セダンです。でもひとたびアクセルを踏み込めば2トンを超える大きく重いセダンとはとても思えないスポーティーな動きが可能です。そして、2トンを超えるからこその静けさや高速でのフラットな乗り心地をも感じとれます。
先に発売されていたデュオセレクトはドライビングフィールまで強い個性があり、工夫しないとスムーズに走らないと言う乗り手を選ぶ車でした。私の様に車に合わせてドライブする車との一体感を楽しむマニアックなユーザーには評判が良かったのです。
しかし、移動の手段としてのみドライブされるユーザーには不評だったと思います。
その様なユーザーの方の為に2007年に発売されたのがこのオートマチックだと思います。運転に関して特別な工夫をしなくても普通にドライブ可能でフェラーリエンジンの心地よいサウンドが楽しめます。のんびりゆったりの走りから超高速のクルージングまで用途的にもプライベートからビジネスまでとより守備範囲が広がった欲張りなラグジュアリースポーツセダン、それがマセラティ・クアトロポルテ・エグゼクティブGT・オートマティックだと思いました。
この車の特徴はなんと言っても世界に180台しかない!
そのうち日本に正規で輸入されたのは8台だけ、しかも右ハンドルはこの1台のみ!
この希少性が判っていただけるでしょうか?
90thアニバーサリーとは、マセラティ社が創立90年を記念して造ったモデルで180台限定で生産されました。
ちなみに90台は北米、残りの90台がそれ以外の国に販売された証しとして、この車は90台のうち81台目のライセンス・プレートがついてます。
新車の価格は1522万5000円でした。
エクステリアは専用のフロントスポイラーやサイドスカートで下回りが引き締まり精悍な感じです。
アニバーサリーモデルだけにグリルやドアノブ等にクロムパーツが使用され、ロールバーの後ろにカーボン地の美しいフェアリング等の高価な部品があちらこちらに使用してあります。
エクステリアのコンディションは、ほとんど新車のまま本当にきれいです。
エンジンはフェラーリの社内工場で作られている4200cc、V型8気筒です。
サウンドはノーマルモードでは音量を絞ってあるのですが、スポーツモードにするとエキゾーストのバルブが開き、品の良い音量、音質でレーシングカーのような美しいサウンドになり、それだけで満足!って感じです。
パワーは390馬力/7000rpmとオープンスポーツとしては必要十分です。
高速道路を走るとボディー下面に入る風がうまくコントロールされており、空力的に安定しているので長距離も苦にはならないと思います。
オープンで走っても巻き込む風はかなり抑えてあります。
エンジンはずばりフェラーリ!スポーツモードで街を流せば誰もが振り向くでしょう!
―この車に乗って感じたこと―
絶好のドライブ日和に、オープンにしてのんびりと走るだけ。
いつもと同じ町並みなのに、いつの間にか海外でバカンスを楽しむ自分を錯覚してしまう。
すがすがしい空気と美しいエキゾーストノートは、クルマ好きには何よりの薬なんだと痛感したテストドライブでした。